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墨出し(すみだし)とは?オートレベルとの使い分けについて解説

この記事で分かること

目次

墨出しとは?【墨出しの種類も解説】

墨出し(すみだし)とは、建築物の壁や床、天井などに「高さや位置」を明示させることです。

英語では、「setting-out/setting up/marking」などと訳され、各工程の最初に、設計図面で指示された建築物の「高さや位置」を現場に反映させます。

また、墨出しの種類や手順は、「建築工事の墨出し手順」と「現場作業の墨出し」で、意味合いが分かれています。

それぞれについて解説していきます。

建築工事の墨出し手順

建築工事の墨出し手順は、国や地方自治体が定めている「共通仕様書や特記仕様書」が基礎になっており、民間の建設会社も「共通仕様書や特記仕様書」に従い、工事を進めます。

建築工事の墨出し手順は、以下のような手順で行われます。

名称 内容

1.基本墨出し(親墨) 通り芯、レベル、コンクリート天端墨、下階からの墨の移動

2.型枠用小墨出し 躯体コンクリートの位置の表示

3.型枠建込中の墨出し 設備用箱、スリーブ、ルーフドレイン、インサート、アンカー、差筋、面木、目地棒の位置出し

4.鉄骨アンカーボルト アンカーボルト位置、レベル、ベースモルタル墨出し

5.鉄骨歪直し 鉄骨の垂直度、レベル等のチェック

6.躯体工事中のその他墨出し カーテンウォール、プレキャスト版等のファスナー、その他の埋込み金物等の位置、レベル出し、デッキプレート取付けの相番

7.仕上基準墨出し 陸墨、柱芯、壁芯の立上げ、開口部芯、階段返り墨、外部角のタテ墨

8.仕上細部墨出し 内外、各芯よりの返り墨、間仕切り墨、二重天井用墨、石・タイル墨、天井・床割付墨、金物取付用墨、等

9.設備関連墨出し 電灯器具取付用墨、各点検口墨、空調器具取付用墨、等

出典:一般社団法人横浜建設業協会「7.建設現場作業に関する共通事項」

現場作業の墨出し

現場作業の墨出しには、設計図面で指示されている建築物の「高さや位置」を現場に明示させます。

墨出しは、材木・鉄筋・コンクリートなどに墨打ちをしますが、主にコンクリートに使用されることが多いです。

現場作業の墨出しには、以下の3つの種類があります。

現場作業の墨出し

・陸墨(ろくずみ)

水平をあらわす墨のことで、作業現場の基準となる高さを表示する墨のこと。

陸墨から上に打つ墨を「上がり墨」、下に打つ墨を「下がり墨」といいます。

・芯墨(しんずみ)

壁や柱の中心を表示する墨のことで、心墨や真墨と表現します。

・返り墨(かえりずみ)

墨を打ちたい場所に障害物がある時、その場所から50cmや1mなど、一定距離を離して打つ墨のこと。

「逃げ墨」ともいいます。

出典:株式会社 大和測量

2.墨出しの作業手順は?【1人でも可能】

2.墨出しの作業手順は?【1人でも可能】

墨出し作業の手順は、まず、設計図面で指示されている位置(ポイント)に印をつけます。

そして、2点以上の印を結び、柱や壁の基準線や水平高さを出すため墨打ちをします。

基本的に、2人1組で作業を行いますが、現在ではレーザー墨出し器を使い1人でやる場合が多いです。

2人1組で作業する場合とレーザー墨出し器で作業する場合の2つの種類について、解説していきます。

2人で作業する場合

墨出しを2人で行う場合、基本的に墨つぼを持つ側に初心者、先端を持つ側が経験者という暗黙のルールがあります。

墨打ちは、チョークラインと違い1度墨打ちしたら消すのは困難なので、経験者が先端を持ちます。

レーザー墨出しの場合

レーザー墨出し器は、自動で本体をある程度まで、水平に調整できる機能が備わっています。

通常のレベルのように、本体を正確に水平にさせる必要はありません。

また、本体からレーザー光(水平または特定の勾配)を照射しで、設計高さを得ることができる機器です。

主に、照射したレーザーを受光器で受け取り、設計位置や高さを測定するので、太陽光や気温の影響を受けにくい屋内の作業に適しています。

1人で作業する場合

墨出しをしたいけど、ちょうど近くに相手がいない場合って結構あります。

そんなときは、短い距離であれば、自分の足で固定して墨打ちします。

足が届かない距離だと、コンクリ釘や重量物で片方を固定して墨打ちします。

墨出し作業は、きつい仕事?

墨出し作業は、肉体的にはきつくありませんが、責任の重い仕事です。

初心者のうちは、手元(補助作業)からのスタートになりますが、経験年数を重ねれば設計図面に指示されている「位置や高さ」を測量しなければなりません。

作業しながら測量機器(レベルやトランシット)の作業手順や保管方法を覚えておきましょう。

また、屋外での作業が多いので、あらかじめ作業の段取りや、測量機器の事前準備をして、手直しが無いようにすることが重要です。

墨出しに必要な道具は?【墨出し機器も解説】

ここでは、墨出しに必要な道具や測量機器を解説しています。

専門用語がわからないときに、参考にしてください。

墨つぼ

墨つぼは材料の凹凸に影響されず、正しい直線を引くことができる道具です。

壺の部分には墨を含んだ綿が入っていて、糸に墨を染み込ませます。

墨糸をはじくと柱や壁に、基準線や中心線が書けます。

建設業では昔から重宝されてきました。

墨差し

墨差しとは、墨汁を用いて水平や垂直の基準線を描く道具です。

墨差しは主に竹製で片端はヘラ状、もう片方はペン状のような形状をしています。

ヘラ状の方は切り込みが細かく入っているので墨を含むことができ、直線を引く時に使われます。

墨打器は長い直線を引きたい場合に、墨差しは短い直線を引く時などに使用されます。

水糸

建築物の水平高さや位置を確認するために使用する道具です。

3-4.測量用チョークライン

墨つぼと同じように現場に寸法や水平レベルを明示させるときに使用する道具です。

画線器という呼び方もあるように、木材や鉄板、コンクリートなどに水平高さや直線を引くときに使用します。

メリットは、墨つぼと違い、粉チョークなので引いた線が簡単に消せることです。

糸巻き

糸を巻いておくための道具です。

糸巻きの巻取り機能は、ゼンマイが内蔵されていて自動的に巻き取るものと、ハンドルを回して手動で巻き取るものの2タイプがあります。

下げ振り

下げ振りは、糸にオモリをぶら下げて垂直を確認する道具です。

下垂直は水準器でも測ることができますが、下げ振りを使う方がより正確に測ることができます。

セオドライト/トータルステーション

測量機には、セオドライトとトータルステーションの2種類あり、用途によって使い分けられています。

セオドライト→角度を測定する

トータルステーション→角度と距離を測定する

セオドライトやトータルステーションには、電源投入時に、望遠鏡を回転させないと測量できない機種と、電源を入れた瞬間から測量できる機種があります。

オートレベル/レーザーレベル

通常のレベルは、測量機(三脚+レベル)を水平にして測量します。

しかし、オートレベルやレーザーレベルは、自動で本体をある程度まで、水平に調整できる機能が備わっています。

通常のレベルとオートレベルの違い

・通常のレベル→測量機(三脚+レベル)を水平にして、水平高さを測量

・オートレベル→ある程度まで自動で水平に合わせる

通常レベルは1か所に置くだけではなく、数か所を移動させながら測量をします。

オートレベルは移動のたびに水平を合わせる手間が減るため、作業を効率化できます。

レーザー墨出器

レーザー墨出器は、本体から水平または特定の勾配でレーザー光を照射し、基準点の高さを得ることができる機器です。

デメリットとして、屋外では太陽光が測定を妨げるので、屋内の墨出し作業に向いています。

まとめ

墨出し(すみだし)とは?作業手順と用語・レーザーの使い方まで解説

この記事では「墨出し」について、作業手順や用語、道具とレーザー機器などを解説しました。

墨出しは工事の各工程の中で、もっとも重要な作業です。

墨出しの「位置や高さ」に間違いがあると、設計図とは異なる建築物が出来上がってしまいます。

極めて責任が重い仕事なので、1つ1つの作業を慎重に実施するようにしましょう。

「墨出し」本記事のポイント

・墨出しの種類は、「建築工事の墨出し手順」と「現場作業の墨出し」の2種類

・近年では、墨打ちは、「レーザー墨出し器」が主流

・墨出し作業は、肉体的にはきつくないが、責任の重い仕事

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